お彼岸につきものの ’ぼたもち’ について


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hana3 お彼岸 と 牡丹餅(おはぎ) との関係

なぜお彼岸におはぎをいただくようになったのでしょうか?これは江戸時代にさかのぼります。この時代に、お彼岸や四十九日の忌明けに食べる風習が定着したようです。


小豆の赤色には、災難が身に降りかからないようにするおまじないの効果があると信じられていて、古くから邪気を払う食べ物としての信仰が、先祖の供養と結びついたと言われています。

ぼたもち は、なぜ ’もち’ なのか? 

また仏教では、彼岸は、彼の岸として悟りの境地を言い、苦しみに満ちている此岸と対になる言葉として使われています。そこで彼岸中は仏道修行に励む訳ですが、日本では祖霊崇拝の慣習を合わさり、ぼたもちやおはぎを捧げ、先祖を慰め、自分自身の功徳を積んでいました。だから本当は、自分たちで食べるものではなかったのです。

暑さも寒さも彼岸まで」と言われるように、春の彼岸は農作業が始まる時期で、秋の彼岸は収穫の時期にあたります。よって、春には収穫をもたらす山の神などを迎えるためぼたもちを、秋には収穫を感謝しておはぎを作ったとも言われています。

hana3 ぼたもち と おはぎ 

現在では、おはぎ と ぼたもち は基本的に同じもので、違うのは食べる時期だけなのです。ですから、ぼたもちといってもあんこの中は お餅 ではありません。具体的には、もち米とお米を混ぜて炊き、すりこぎで 半つぶし(半殺し) にしたものです。

春の「ぼたもち」
夏の「夜船」
秋の「おはぎ」
冬の「北窓」

と季節によって呼び方が変わります。

現在は全く同じもので呼び方だけが違う両者ですが、以前は若干の違いがありました。両者の違いを簡単にまとめますと次のようになります。

ぼたもち は、なぜ ’もち’ なのか? 

hoshi2 季節

ぼたもちは、牡丹の季節、春のお彼岸に食べるものの事で、小豆の粒をその季節に咲く牡丹に見立てたものなのです。一方、おはぎは、萩の季節、秋のお彼岸に食べるものの事で、小豆の粒をその季節に咲く萩にに見立てたものなのです。

では、何故牡丹の方にだけ餅が付いたのでしょうか?その由来は、「倭漢三才図会」(江戸時代の百科事典)に「牡丹餅および萩の花は形、色をもってこれを名づく」とあり、牡丹餅がぼたもちになり、萩を丁寧に言っておはぎになったというのが、最も一般的な説ということですが、この説明ではいまひとつよくわかりません。私の推論ですが、むかしは牡丹の季節、春のお彼岸に食べる時は、お米を 全殺し 、いわゆる お餅 にしていたのではないでしょうか?

hoshi2 おはぎ と ぼたもち の大きさ、形 

ぼたもちは、牡丹の花をかたどって丸く大きく豪華に作って、おはぎは、秋の七草の萩の赤紫の花をかたどって小ぶりで長めに丸められて作られたと言われています。


ぼたもち は、なぜ ’もち’ なのか? 
牡丹


hoshi2 おはぎ と ぼたもち のあんこ 

昔は、つぶあん か こしあん かは、あんの材料である小豆の収穫時期に関係があったのです

秋のお彼岸は、小豆の収穫期とほぼ同じで、とれたての柔らかい小豆をあんにすることができます。柔らかい皮も一緒につぶして使うので、つぶあんができます。
春のお彼岸は、冬を越した小豆を使うことになりますが、皮は固くなっています。当然固くなった皮をそのままに使っては食感が悪くなります。そこで皮を取り除いた小豆を使い、こしあんができます

よって春のぼたもちは こしあん で、秋のおはぎは つぶあん だったのです。しかし、今では保存技術の発達や品種改良により、春でも皮のまま使うことができる小豆が登場してしまい、この理由は意味がなくなってしまったのです。

hoshi2 半殺し と 全殺し

日本昔話や落語の枕で有名な 半殺し と 全殺し ですが、一般的にはお米のつき方のことです。ついた米の粒が残っているものを半殺し、完全にもちの状態までついたものを全殺しと呼びます。現在のおはぎ(ぼたもち)のお米は ’半殺し’ です。

しかし、完全にもちの状態までついたもの(全殺し)をぼたもち、ついた米の粒が残っているものを(半殺し)をおはぎと呼ぶ地域もあります。

ここに、ぼた餅という由来があるのではないでしょうか。つまり小豆と同様、秋のお彼岸は、米の収穫期とほぼ同じで、とれたての柔らかい米を半殺しにすることができます。

春のお彼岸は、冬を越した米を使うことになりますが、米は固くなっています。当然固くなった米を半殺しで使っては食感が悪くなります。そこで全殺し(餅)にしたのです。よって春は ぼたもち(餅) と呼ばれたと考えられませんか?


これも小豆同様、今では保存技術の発達や品種改良により、春でも半殺しで使うことができる米が登場してしまい、この理由は意味がなくなってしまったと考えられます。

また、一部の地域では、つぶあんを半殺し、こしあんを全殺し、本殺しまたは皆殺し、と呼ぶところもあるそうです。

hoshi2夏の「夜船」 と 冬の「北窓」

water夏のおはぎは「夜船」

おはぎ(名前がたくさんあって呼びにくいので、一般的にはおはぎと呼ぶことにします。)は、お餅と違い、餅つきをしません。よって杵でつかないので、「ペッタン、ペンタン!」と音がしないのです。

ということで、ペッタンペッタン音がしないので、お隣さんなどからするといつついたのか分からない。そういうところから、

→ 搗(つ)き知らず → 着き知らず、となり

夜は船がいつ着いたのか分からないことから「夜船」となったようです

water冬のおはぎは「北窓」

おはぎは餅つきと違い、杵でつかないのでペッタンペッタンと音がしない。だから、いつついたのか分からない、までは同じです。ここからの変化が違います。漢字に注目です。


 → 搗(つ)き知らず → 月知らず、となり

月の見えないのは、北の窓なことから「北窓」となったとのことです。

なかなか洒落ていますね。

*参考:All About「電子辞書・辞書・事典」旧ガイド


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Posted by 安儀製餡所 at 00:33 あんこ豆知識コメント(0)
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