糖度
今回は糖度について説明したいと思います。
現在 あんこの品質、特に甘さを表す時に、一般的に糖度何%とかBrix何%と表現されます。
弊社でも あん練りの際に屈折糖度計を使ってBrixを測りそれを糖度としています。
ただし、これは甘さを測っているのではなく、どちらかと言えば 加糖あん の練り具合、硬さを確認しているのです。
甘さを表す指標
現在、甘さを表す指標として比較的良く使われるのが、甘味度、糖度、Brixです。
この三者の違いを簡単に説明すると次のようになります。
このうち、甘味度については以前に少しふれましたので、今回は糖度、Brixについて書いてみます。
その前に、この両者と密接な関係にある糖度計について説明をします。
糖度計
① 糖度計の原理
糖度計は、屈折率を測定するものです。コップに水を入れ、その中にストローを入れると、水に浸っている部分のストローが曲がって見えます。
次に、水の砂糖をたくさん加えて濃い砂糖水にすると、ストローは更に曲がって見えます。これが光の屈折という現象です。
糖度計は、この原理(液体の濃度が高くなると、その屈折率も上昇する)を応用した測定器です。糖度計の代表例としては、昔からある手持屈折計とポケット糖度計とが有ります。どちらもBrix目盛を搭載しています。
② Brix目盛
Brix目盛とは、ショ糖のw/w%の事です。濃度と屈折率に相関があることから糖度計の目盛として使用されています。
ショ糖の濃度と屈折率との相関はBrix博士が発見したもので、サトウキビなどの砂糖の取引のための品質規格として国際砂糖分析統一委員会(ICUMSA)によって規格化されています。
糖度 = 甘さ とは限らない
① 果物の糖度
糖度が高くとも糖分が多いとは限りません。
一般の果物では屈折率を変化させる要素のほとんどが糖であることから
糖度=糖分という
「常識」が生まれました。
しかし、温州みかんを屈折糖度計で測った場合、糖分が10 %であってもクエン酸が1 %あれば糖度は10.9度となります。
つまり果物でも屈折糖度計で測ったBrix糖度のすべてが糖分ではないのです。
この場合、実際の糖分はBrix糖度より低いことになります。
② 糖度と甘味度
また、糖度が高いほうが甘いとも限りません。
糖分が同じならば屈折糖度計で測ったBrix糖度は酸が強いほうが高くなってしまいますが、味覚では酸が少ないほうが甘く感じるからです。
最終的には味覚を重視しなければ意味がありません。
Brix = 糖度 ではなく 実際は Brix = 濃度 である
ラーメンスープ、シチュー、焼肉のたれなどは糖分の他に塩分、酸、エキスなどが溶け込んでいます。
この場合はこれらを合算したもの(可溶性固形分)が製品100g中に何g入っているかを百分率で表します。
これら合算したものを%(百分率)で表した値を濃度といいます。
この場合、屈折糖度計で計った値はこの濃度を指し、Brix(ブリックス)=濃度となります。
加糖あん の 糖度
目的
一般的に加糖あんのBrix糖度を測るのはは次の目的のためです。
① 加糖あん の
甘さ を表示する。
② 加糖あん の
水分活性値を推測する目安となる。
③ 加糖あんとあんを包んでいる和菓子の生地の糖度を合わせることにより、浸透圧による
水分の移行を防ぐ。
④ あん練りの時の
加熱の具合を決める。
Brix糖度の実態
さて、
生あん 100kg に対し
砂糖 60kg を加えて いわゆる
並あん を作るとします。
結果、次のような出来上がりになりました。
Ⅰ 出来上がりは、屈折糖度計で Brix
51~53度
Ⅱ 出来高は あん練り時の 加水 と加熱による水分の蒸発により、
155kg
となった。
さて、この場合 三種類の糖度が存在します。
① 実際の糖度
砂糖(60kg) ÷ 加糖あん出来高(155kg) × 100 =
39%
② 理論上のBrix(濃度)
生あん の含水率 を 60% とすると 生あん100kgは 水 60kg、でん粉 40kg
となります。
したがって、屈折糖度計を使えば、理論上Brix(濃度)は
{砂糖(60kg) + でん粉(40kg)} ÷ 加糖あん出来高(155kg) × 100 =
65%
になる筈です。
③ 屈折糖度計 で実際に測ったBrix(濃度)
過去の経験より 上記の条件で製造すれば、
51~53% になります。
結論
①と③が一致しないことは今までの説明で想像がつきますが、②と③が一致しないということは、 加糖あんに限って言えば、
「屈折糖度計はその濃度を正確に測定する訳ではない。」といえます。
屈折糖度計はあくまでも、ショ糖水溶液の屈折率を基準としていますので、加糖あんでは正確に反映されないと推定できます。
もし和菓子の生地のBrix(濃度)が加糖あんと同様に本来の濃度を反映していないのであれば、目的③にも使えません。
Brix(濃度)の意味
それではBrix(濃度)が全く役に立たないかと言うと、決してそうではありません。
あん練りは、昔は年季の入った職人さんが、最後に釜に杓子を入れ、杓子から流れ落ちるあんの具合を見て練り具合を判断したものです。
一方、現在はこの職人技の代わりにBrix(濃度)を使うわけです。
上記の例では、あん練りの加熱、撹拌作業において、屈折糖度計のBrix(濃度)を確認していき、51~53%になった時点で作業完了となります。
このようにして、
品質の標準化を図るために屈折糖度計のBrix(濃度)を利用しています。
最後に
最後にもう一つ付け加えれば、糖度は実際の甘さを全く反映していないということです。
今まで述べてきたように、砂糖の代わりに糖アルコールなどの食品添加物を使ったり、一部置き換えたりすれば糖度を高くして甘さを控えることも可能です。
ただし、そうすれば砂糖にはない糖アルコール独特の味(甘味)が出てきます。
先日、電車に乗っていて「最近の子供は和菓子で本当の砂糖の味を知らない、今の饅頭は
調整糖(加糖調製品のことです)ばっかりや!」と大阪のおばちゃんが嘆いていたのを聞きました。
加糖調製品とは砂糖と糖アルコール(おもにソルビトール)を混ぜたものです。
これはなんだか現在の
醸造アルコールを添加する
日本酒に似ています。
現在のアルコール添加の目的は、酒の量を水増しするためではなく香味の調整 が第一の目的であるそうですが、私などは、醸造アルコールを添加されている
吟醸酒よりも、やはり添加されていない
純米酒の方が美味しく思います。
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