Virgil Caine の末裔

2019年07月18日
「スリー ビルボード」 という映画を遅ればせながら観ました。

映画は評判通りすごくよくできていて特にサム・ロックウェルのレッドネックだかヒルビリーぶりが際立っていました。

ただ、一つ気に入らないのが、この中でクライマックスと言える場面で懐かしい「Old Dixie Down」が流れるのですが、これが「ジョーン バエズ」のヴァージョンだったことです。確かに商業的にはこれが一番成功したのでしょうが、やはり 「The Band」 のを聞きたかったと思いました。

サム・ロックウェル演じるジェイソン・ディクソン巡査はこの歌に登場するVirgil Caine の末裔ということでしょうか。



今回そんなことでふとThe Bandの「The Night They Drove Old Dixie Down」について書いてみます。

The Band

昔見た海外ドラマで中年男性が 「The Weight」を鼻歌で歌っていて、彼の母親に「未だに意味が分からない」という場面がありました。英語が母国語の人間でもそんなものかという感じで私が分からないのも当然かなと安心しました。

この「Old Dixie Down」はテーマが分かり易いのでなんとなくわかったような気になっていたのですが、改めてその歌詞を読んでみるとよくわからないところがたくさんありました。

私が「The Band」の歌としてずっとイメージしていたのは彼らのライヴアルバム「Rock Of Ages」に松山猛さんが書いていたライナーノーツです。

古い話で記憶が曖昧なのですが「彼らの音楽は映画「ラスト ショー」の世界を描いている。」みたいな内容だったと思います。

ある意味「スリー ビルボード」と「ラスト ショー」の世界は時代は違っても舞台が閉塞感で一杯のアメリカ合衆国の田舎という点で非常に近いといえます。

それで「Old Dixie Down」もなんとなく歌詞の意味が分かったような気になっていたのですが、今はインターネットという便利なものもあるので

少し調べてみました。そこで「華氏65度の冬」というブログを見つけました。

このブログには「Old Dixie Down」の歌詞について丁寧に解説がされていました。
 
今回感じたのは、この歌は旧約聖書の「カインとアベル」の物語が色濃く反映されているということです。


歌詞

1.
Virgil Caine is the name and I served on the Danville train
'Til Stoneman's cavalry came and tore up the tracks again
In the winter of '65, we were hungry, just barely alive
By May the tenth, Richmond had fell
It's a time I remember, oh so wel

Virgil Caineというのが私の名前で、
Stoneman将軍の騎兵隊が線路を再び破壊するまでDanville鉄道で働いていた。
1865年の冬、みんな空腹で半死半生だった。
5月10日 Richmond が陥落した日のことは今でもよく覚えている。

リフレイン
The night they(北軍) drove old Dixie down
And the bells were ringing
The night they drove old Dixie down
And the people were singing
They went, "La, la, la…"

北軍が南部の街に進駐してきた夜。
彼らは勝利の鐘を鳴らしながら。
北軍が南部の街に進駐してきた夜。
私たちは悲しみを紛らわせるため歌っているしかなかった。

2.
Back with my wife in Tennessee
When one day she called to me
"Virgil, quick, come see, there go the Robert E.Lee"
Now I don't mind choppin' wood
And I don't care if the money's no good
①Ya(you) take what ya(you) need and ya(you) leave the rest
②But they(北軍) should never have taken ③the very best

妻と一緒にテネシーに戻った。
ある日妻が私を呼んだ。「ごらん、リー将軍だよ。」
今は木こりを生業としているし、稼ぎについてとやかく言うつもりはない。
神は自分の欲しいもの(アベルの供物)は持って行ったが、いらないもの(カインの供物)は残していった。
でも北軍は奪ってはいけないもの(兄の命)まで奪ってしまった。

リフレイン
The night they drove old Dixie down
And the bells were ringing
The night they drove old Dixie down
And the people were singing
They went, "La, la, la…"

3.
Like my father before me, I will work the land
And like my brother above me, who took a rebel stand
He was just eighteen, proud and brave
But a Yankee laid him in his grave
I swear by① the mud(blood) below my feet
②You can't raise a Caine back up when he's in defeat

亡くなった父や兄のように私は土地とともに生きる。
兄は反乱軍に参加した。
兄は18歳で誇り高く勇敢だったが北部の奴が彼を墓穴に横たわらせた。
私は足元に流れる血にかけて誓う。
(カインの子孫である)兄が(アベルの子孫である)北軍に打ち負かされても、決して国家を分断するような戦争は起こさない。(神は災厄を引き起こすことは出来ない)

The night they drove old Dixie down
And the bells were ringing
The night they drove old Dixie down
And the people were singing
They went, "La, la, la…"

たしかに昔のLPについていた英語の歌詞は随分でたらめだったのがよくわかりました。

南北戦争をVirgil Caineという南部の一般的な人物の目線で歌ったものだと思っていましたが、このブログを読んでかなり詳細に意味が分かるようになりました。それでも若干分かりにくい点があるので私なりの解釈を書いてみました。

なんでも南北戦争をカインとアベルの関係に例えることがよくあるそうで、この場合農業が主産業の南部がカイン、工業が主産業だった北部がアベルとなるのでしょうか。つまりVirgil Caineとはロビー ロバートソンが適当につけた名前ではないようです。

解釈


1.Virgil Caineの回想になっています。

  彼が南軍の兵站線であったDanville鉄道で働いていて、北軍の Stonemanという将軍(かなり評判が悪い人物)の騎兵隊がそれを破    壊していった。

  1965年の冬、半死半生でついに南部の首都Richmondは陥落した。

2.テネシーに戻ってから

the Robert E.Lee は「最初リー将軍だったのが後に the がついて蒸気船に歌詞が変わった」とレボン ヘルムが言っていました。

 妻と一緒にテネシーに戻ってきて、そしてリー将軍を見た。

 現在は木こりを生業としているが、稼ぎについてはとやかく言うつもりはない。

 さて、ここからこの歌は意味がわかりにくくなってきます。

 特に二つの代名詞 youとtheyが以後頻繁に出てきます。しかしこれが誰を指しているのかが分かりにくい。しかもどう解釈するかによって3番にも影響してきます。

 私はtheyは北軍と解釈したのですが、youは誰を指しているのか?

 以下は私の解釈です。

①Ya(you) take what ya(you) need and ya(you) leave the rest

カインとアベルが神に供物を捧げる場面を思い起こさせます。旧約聖書では神はアベルの供物のみを持っていきカインの供物は残します。

これによってカインがアベルに嫉妬し人類最初の殺人が起こったとされています。

このような兄弟の争いを引き起こした原因の一つに神の依怙贔屓があったとロビーロバートソンは考えている節があります。

②But they(北軍) should never have taken the very best

過去完了形の文章で「北軍は奪うべきでないものを奪っていった。」というところでしょうか。

③the very best

最初、「風と共に去りぬ」みたいに南部の誇りみたいなことを考えていたのですが、3番から判断するとVirgil Caineの兄(?)の命とも考えられると思います。

3.Virgil Caine の決意

自分は父と同じように土地に生きる。このあたりが遊牧民であったアベルとは違うということでしょうか。

兄は誇り高く勇敢で反乱軍に参加したが殺されてしまう。
 
I swear by the mud(blood) below my feet

①the mud(blood) below my feet 

この件も旧約聖書を思い起こさせます。

②You can't raise a Caine back up when he's in defeat

「華氏65度の冬」にもありますように一番難解な所で、ロビー ロバートソンしか本当の意味は分からないでしょう。

私も初めは「たとえ兄が打ち負かされても屈服することはない」みたいな勇ましい気持ちを swear からイメージしていたのですが、この英文を改めて読んでみると疑問が残りました。

"to raise Cain" means to cause trouble つまりraise Cain には 「災厄を引き起こす」という使い方があるということです。
 
旧約聖書とは反対にカインの末裔がアベルの末裔に殺されます。しかしそれに対して「地獄のカイン一族を呼び起こす」つまり「再び兄弟による争い(ここでは内戦による国家の分断)を引き起こす事は絶対にない。」と Virgil Caine は(神に対し)決意するのである。

あくまでも私の解釈ですが、皮肉なことに現在アメリカ合衆国は国家の分断を引き起こしかねない人物が大統領になっています。

Rock of Ages

昔本当によく聴いたこのライブアルバムですがこのフルアルバムがあるのを最近になって知りました。

最後は Bob Dylan も登場してThe Band と共演していたようです。










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Posted by 安儀製餡所 at 00:02 音楽映画コメント(0)
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