今回は前々回で少し説明した餡の表示方法について、この記事から考えてみたいと思います。

現行の表示法では、餡は加工食品であっても原産地表示を義務付けられている。だが不思議なことに、「砂糖を加えた餡」は表示対象外となるのである。

要するに、私たちが和菓子やアンパンで口にしている甘い餡は、中国産であっても判別不可能。ときおり親切に「国産」と表示してある商品があるので、そうしたものを選びたい。


以上が週刊文春に記載されていた記事です。

表示法に関する記述は正しいと言えます。ただし、付け加えると現実的には、「砂糖を加えた餡」以外の餡が一般に流通することは、「乾燥餡」を除いてほとんどありません。



face01 生餡

「乾燥餡」を除く、「砂糖を加えた餡」以外の餡とは私たちが「生餡」と呼んでいるものです。

ご覧になったことのない人も多いと思いますので、「生餡」とは以下の写真のものです。

「危ない中国産を見破る方法」という週刊文春の記事 3
生餡、小豆


これは水分が60%前後もあり、品質の管理が非常に難しく、普通小売店で販売されることはまずありません。それだけ商品の鮮度を保つことは難しいものです。

これらは和菓子店で加工されるか、自社で加工されて加糖餡となります。

一方、「乾燥餡」は読んで字のごとく、乾燥しているので、商品は痛むことはまずなく、小売店やネットで購入できます。

これが、「乾燥餡」と「生餡」の大きな違いです。

いずれにしても、消費者が食べるのは、「生餡」や「乾燥餡」ではなく、「加糖餡」だけなのです。

face01 加糖餡の表示

現在、加糖餡(生餡に砂糖を加熱しながら練った練り餡)は下の表にあるように材料の原産地表示の義務はありません。

「危ない中国産を見破る方法」という週刊文春の記事 3

㈳菓子・食品新素材技術センター監修「わかりやすいお菓子の表示」



たしかに、消費者に流通しない「生餡」に原産地表示が必要で、流通している「加糖餡」に表示義務がないというのも不思議です。

その理由については、私も心当たりがありますが、確証があるわけではないのでここでは書きません。

face01 特色のある原材料

ときおり親切に「国産」と表示してある商品があるので、そうしたものを選びたい。


とありますが、実際には「特色のある原材料」として小豆についてはこの下の表にあるように様々な表示がされています。

㈳菓子・食品新素材技術センター監修「わかりやすいお菓子の表示」

「危ない中国産を見破る方法」という週刊文春の記事 3























しかしながら小豆を「特色のある原材料」として表示するのは「諸刃の刃」になるという側面があります。

小豆は農産物ですので、年によっては、各品種、生産場所、選別工程(豆の大きさ)によって、出来、収穫量が異なります。また周知の通り相場制のものですから、価格は年度、時期によって大きく変動します。

加糖餡にしても、それ自体での売り上げはたかがしれていて99%は、和菓子、パンに加工されます。

ですから、不作等何らかの理由で、収穫量が落ち込んで価格が急騰したからと言って、和菓子、パンメーカーの了解なしに
餡の値上げや原材料の変更ができません。

「特色のある原材料」を表示することはこのように「自縄自縛」におちいり、経営を悪化させる可能性があります。

したがって、「国産小豆」という表示はリスク回避という側面もあるのです。


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Posted by 安儀製餡所 at 10:10 あんこの楽しみ方コメント(0)
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